自閉症児の育て方 ~専門家ではなく親だからわかること~

東大王に勝る知能と若干の透視能力を持つ父親が、重度自閉症児♂️を育てきた経験から感じたこと、やるべきこと、やってはいけないこと、etc.をまとめたブログです。健常児の養育に通じる内容もありますので、参考にしていただけたら幸いです。

我慢はできます

納得はできなくても、我慢することはできます。

うちの子のエピソードとしては、支援学校で先生に「がまん!」と言われて、泣きながら「がまん!」と珍しくおうむ返しで言葉を発してがまんしたということがありました。
家に帰ってきてその事を知って、「がまんしたの?えらいねーお利口さんだねー」と誉めてあげました。

「ダメ!」と同じで、「もうそれで終わりだよ」「おしまい」は徹底して守らせています。

自分の思いどおりにならないことがある、"がまん"しなければいけない事/場合があるという事を学習する/受け入れる事は、"すべての子ども"にとって重要な事だと思います。

可哀想だから、などの理由を取って付けて(敢えてそう言います。)、もう少しだけと我儘を通させてしまうと、その時は平穏に済んだとしても、後々もっと面倒な事になります。

そんな妥協をするぐらいなら、初めてから声をかけずに、気が済むまでやらせた方がマシだと思います。

ルールを守らせる

納得させる必要はないという件についてですが、それは守らなければならないルール、決まりごとだからです。

行動援護ケーススタディで、自閉症者の散歩に付き添って振り回されて後を追いかけることしかできなかった支援者が、絵カードを使って行動予定に"同意"してもらい、予定どおりに行動してもらうことができ、水道での水遊びも時間制限を守らせることができ、利用者も満足して平和に散歩を終えることができた、というものがありました。

これは、利用者に好き勝手にやらせるのではなく、"支援者が主導権を握る"ことができたから、利用者が約束は守らなければならないということを学習できたからだと思います。

以前読んだ本に、家族旅行に出かけた時に約束を破ってしてはいけないことをしてしまったので、すぐに旅行を中止してホテルもキャンセルして家に帰ったという例がありました。

それぐらい徹底してやらなければ「ルールを守る」は身に付きません。少しでもブレれば、ルールは守らなくてもいいと教えることになります。

ルールを守らせるためには、主導権が保護者/支援者の側になければなりません。

ルールを守るのが当然になれば、ワガママも言いませんし、周りに迷惑をかけることもなくなり、おでかけが楽しいものになり、社会生活もできるようになります。

注意して逆ギレされる二つの理由

癇癪を起こしてテーブルなどを叩いたのを注意すると更に怒るという現象には大きく二つの理由があると思います。

一つ目は、いつも対応が違う(一貫していない)ので「何で!」と怒っている場合です。("納得"できない場合ということになるのでしょうか)。

二つ目は、自分の思いどおりにしたくて駆け引きをしている場合です。これは、以前にそうやって怒ったら自分の望むモノ/状態が得られたという経験があるからです。もっと怒ったら折れてくれるという経験です。ナメられているということです。

この場合、癇癪がどんどんエスカレートします。より大きなハンマーを持っている方が勝つというやつです。
より大きな声でぶちギレれば、おとなしく引いてくれるかもしれません。
クールダウンスペースは使っていませんが(例えばお風呂に入っている時に壁を叩いても、クールダウンスペースであるベッドに連れて行くことはできないので)、その子にとって有効であれば利用すれば良いと思います。
何にせよ、断固とした態度は必要です。


一貫して注意し続けていれば、当然そう言われるものだと学習してくれます。言うことを聞いてくれて、それを完全にしなくなってくれるかどうかはまた別ですが、注意されたことに腹を立てることはないと思います。


三つ目があるとすれば、とんでもないワガママだということですね。その場合は…お手上げかもしれません。根気よく学習させていくしかないですね。

納得してもらおうとしない

テーブルなどをバン!と叩いたときにどうしているかをデイのスタッフに訊かれて、「叩かない!」と言うと答えたら、「それで納得してやめるんですね?」と言われました。その時は「ええ」と答えて終わりにしましたが、ん?納得?と引っ掛かりました。叩くのをやめはするけど納得はしていないかもしれません。
そもそも、"納得"というのは高度な思考の働きで、重度の自閉症者ができることではないかもしれないからです。

ヘレン・ケラーとサリバン先生の話を知っていますか?
ヘレン・ケラーは納得してサリバン先生の指導を受けたのでしょうか?納得していたらあんなに暴れて反抗はしないでしょう。
それでも、ヘレン・ケラーは最終的にサリバン先生に感謝しています。


例えば...

あなたの子どもが悪い事をしよううとしていたら、さらには自殺をしようとしていたら、あなたはどうしますか。
止めようとしますよね?どうやって?説得しますか?
子どもがあなたの説得を"納得"しなかったら、本人がそうするって聞かないのだからしょうがないね、で済ませますか?それと同じです。

注意したらエスカレートして怒るからできない、とそのスタッフは言いました。それも上記の場合に当てはめて考えてみてください。

叩くことはいけないことなので、一貫してやめさせなければいけません。現に私の言うことは聞いてやめてくれます。
注意したらさらに激しく怒るのには、うまくいっていないサインだと考えます。それはまた次回に。

マスクは着けられます

もっと早く書けば良かったかもしれません。

新型コロナでマスクを着けなければならなくなりましたが、うちの子も最初はマスクを嫌がってすぐに取ってしまっていました。
でも今ではずっと着けていられます。

結局は慣れ(と諦め?)です。
感覚過敏なんかありません。

歯ブラシは極細のやわらかいがオススメ

うちの子は、痛覚は鈍感です。
怪我をしても痛がりませんし、自分の頭を叩いたり、壁をバンバン叩いたりしても、つねっても、痛い素振りはありません。

でも歯磨きは痛いようなので、歯ブラシは極細のやわらかいのを使って優しく当てて電動歯ブラシのように細かく動かしています。ブラシの毛先を寝かせず、隙間に入るようにします。

これは自閉症関係なく、歯磨きの基本ですね。

ゴシゴシ磨いたらエナメル質が削れてしまいます。

作業所の歯科検診でも「磨きすぎ」の人が多かったです。自閉症の人は歯ブラシを細かく動かせず、力任せになってしまうので、かたい歯ブラシだともっと歯が傷付きますし、隙間の汚れは取れません。

痛いと歯磨きを嫌がりますし、歯ブラシを噛んで毛先を曲げてしまいます。かたいのなら曲がりにくいだろうと思うのはナンセンスです。

うちの子は自分で歯ブラシに歯磨き粉を付けて、歯磨きやってと私の所に来ます。自分でも少し磨けるようになってきて、動きもだいぶ細かくなってきました。

結局は慣れです。
練習すればある程度はできるようになります。

召し使いにならない

駄々をこねられてしょうがないからといいなりになったら、駄々をこねれば自分の思いどおりになると教えているようなものです。
癇癪、物投げだったらなおさら大変。どんどんエスカレートします。

子どもは取引をして(駄々をこねて)大人の出方を見て、自分の言う事を聞いてくれる人・くれない人、必ず折れる人・絶対に折れない人を判定します。
この人は嘘をついても怒らないんだなとか、怒ってもその場だけでペナルティはないから大したことはないなとか、そういうふうに判定されたら、子どもは平気で嘘をつき続けます。

親でなくても行動援護従業者にとっても、召し使いにならないというのは重要なことです。
好き勝手に道路を走って行くのを慌てて追いかけたり、水道の水で飽きるまで遊ばせたりしていては、何の支援にもならないのです。
自閉症児に主導権を握らせてはいけません。(健常児でもそうですが。)
保護者・支援者が主導権を握り、決められた、事前に同意してもらったルール・予定を守って行動できるように仕向けなければなりません。
ルールは守らなければならない、守ったらいいことがある(誉めてくれる)という経験を積み重ねて定着させなければ、特に交通ルールなどは、命にかかわります。

暴君は召し使いのお願いを聞いてはくれませんよ。